SONY 3R-68

概要

3R-68は、AM専用のポケットタイプのオールトランジスタラジオです。縦長のラジオですが、一般的なラジオと異なり、狭いほうの側面にダイヤルスケールを、上部につまみ類を配置した変わったデザインです。SONYの大きなロゴが2個所にあるのもこのシリーズのラジオぐらいではと思います。

デザイン上はダイヤルスケールのついている面が前面と思われます。同じく、側面にスケールがあり、厚さ9mmのICR-9もありますが、こちらは、キャッチの「厚さ9mm」の通り、カタログの寸法も厚さ、奥行となっているので、類似機種の3R-65共々、歴代のソニーラジオで、最も幅が狭いラジオではという気がします。

日本語のサイトにはあまり情報がなく、手持ちの販売用カタログにも記載がありません。海外のオークションで見かけることが多く、英語版のWikimediaには、このラジオの写真や雑誌広告が保存されていますので、主に海外向けだったのかもしれません。3R-68の新聞広告(wikimedia)

このラジオと内部はそっくりで、外観もよく似ている、3R-65というラジオが同じ頃にに発売されてたようです。これも同様に海外ではよく見かけますが、日本ではあまりみません。3R-65は周波数の表記単位がC（サイクル）になっており、型番から言っても3R-68が後継かと思われます。

電力増幅はトランスを2つ使用するプッシュプルです、トランジスタは8石使われていますが、各パーツは基板上非常にコンパクトにまとめられています。電力増幅のゲルマニウムトランジスタ2SB187 x 2を除くと、日本製でなさそうなトランジスタが使用されています。錠剤のような形で、929と書かれたものが4石で、局発、混合、中間周波増幅2段に使われています。あと、53と書かれたものが2石は、低周波のドライブアンプに使われています。類似機種の資料では、前者は2SC403、後者は2SC633と記載されていますので、それらの互換トランジスタと思われます。

仕様

発売:

1970年

電源:

006P (9V)

トランジスタ等:

8 TR

音声出力:

150 mW

バーアンテナ:

約52mm

操作部:

電源スイッチ付きボリューム、チューニング

表示等:

受信周波数:

MW:: 530 - 1605 kHz

ターミナル:

イヤホン

サイズ:

W28mm x H66mm x D66mm

重量:

178g(電池別)

色:

黒、白(アイボリー)、青（ターコイス）

製造:

日本製

価格:

$12.95（アメリカ）

メンテナンス

ダイヤルスケールが外れてしまっていましたが、幸い紛失しておらず、内部に入ったままでした。ガリ以外は動作は問題なさそうです。その他、裏蓋の爪が摩耗して、ゆるゆるになっていました。

電池交換のために裏蓋を外すタイプで、開けたところです。部品の密度は高いです。裏蓋はゆるゆるだったのですが、プラスチックの破損、摩耗によるもので、補修案が浮かばす今回は、そのままになっています。

ガリはひどいものの、9Vで放送は特に問題なく聴取できました。

基板は固定用のビスを外すと取り外せます。ただ、この個体はねじ止め剤でネジの頭が馬鹿になっており、ネジを外すのに少し苦労しました。イヤホンジャックは外しておいたほうが、基板取り外しの作業がしやすいと思います。

チューニングのメカはしっかりしています。

基板のフレームにダイヤルスケールは接着剤で固定されていましたが、劣化のため外れたようです。接着剤を削りとりました。

躯体は完全に分離できましたので、水洗いしました。スピーカーは、歯ブラシと湿らした綿棒で清掃しました。

ダイヤルスケールの正確な取り付け場所が分からないことから、融通が菊用に固定は接着剤ではなくて薄手の両面テープ行いました。ダイヤル針は、このスケールの側面をレールのようにして移動します。

ボリュームは幸い、分解できるタイプでしたので、内部清掃しました。カーボン部分が少し劣化しているためか、接点用オイルも塗りましたが、ガリというか接触の悪い部分は完全には治りませんでした。

カタログ情報等

新聞広告(The San Antonio Texas Express Newspaper, May 11, 1971)

シャツのポケットに入る新たな一品
ソニーのスリム、高性能、大音量のAM
シャツポケットラジオ

ソニー3R-68は、シャツのポケットに入るサイズでありながら、高性能です。
210mWの音声出力に2-1/4インチのスピーカーを採用しており、AMをきれいに力強く受信できるのも納得です。
丈夫で革製のようなデザインで、手軽に持ち運べるストラップ付です。
見やすいスライド式ダイヤルスケール採用、指先で簡単に操作できるよう操作部を集めました。フェライトバーアンテナ内蔵です。
これを買っておけば、あなたの財産を失うことはありません。

前出のWikimediaにある新聞広告の内容です。最後の一文はなんか唐突で意味が分かりにくいですが、財産を失うことを、シャツすら失うということで"lose one's shirt"と言うそうで、見出しの「シャツポケットラジオ」と掛けてあるみたいです。

2021/12/04