SONY ICF-SW30

Serial No.

概要

SONY ICF-SW30は、ポータブルサイズのMW/SW/FM 12バンドのレシーバーです。PLL方式によるワンタッチチューニングで、特に短波向けに作られています。

この時期、10機種以上のワールドバンドレシーバーが発売されていました。バンドは12あり、MW、FMにSWが10バンドとなっています。本モデルは、周波数直読でワンタッチで選局できる、PLL方式のラインアップの中では一番安価なエントリーモデルで、ICF-SW33の弟分という感じです。
エントリーモデルですが、SWの受信については、ダブルスーパーヘテロダイン方式を採用しています。本体前面にも"SW DUAL CONVERSION" の記載があります。標準価格で20000円を切っていたこともあってか、結構人気があったのか、ネット上の記事も多くあります。
海外向けにも発売されたため、地域の規制に合わせて、聴取できる周波数が制限されていたモデルがあります。また、長波(153-297kHz)が受信できるICF-S30Lというバリエーション(フランス向け)があるようです。FMはスピーカーではモノラルですが、ヘッドセットを接続するとステレオで聴取できます。
SWは10バンドありますが、周波数が連続ではありません。一般的な短波放送に使用される周波数は、世界的に決まっているため、各バンドともその範囲に少しマージンを足した受信範囲になっています。ただ、北朝鮮等、定められた周波数以外で放送を行っている国もあるそうで、そういった放送は受信することができません。
エントリーモデルであることもあり、LCDは小さめで最低限のサイズです。ただ、LCDパネル・ドライバーは雑音の発信源で、内部でシールドはされていますが、受信上は小さいほうが良いかもという面もあるようです。
上位機種は、目盛りが大きかったり、テープレコーダー内蔵、コンパクトサイズ、局名登録機能等ありますが、受信機の性能としてどれぐらい異なるかは、他モデルが手元に無く不明です。
MWは電池ボックス内に切替SWがあり、9kHz/10kHzを切り替えることができます。短波はスキャンすると5kHzステップですが、マニュアル選局は1kHzステップで調整できます。日本のFM放送は0.1MHzステップですが、このラジオは海外に合わせて、0.05MHzステップでチューニングできます。
プリセットボタンは5つで、各バンド5個まで登録できます。上位機種に比べると控えめの容量です。それ以外の選局方法として、オートスキャンとチューニングボタンがあります。オートスキャンは5kHzステップですが、チューニングボタンは短波は1kHz刻みなので、細かい調整はできますが、周波数セットにすこし時間が必要です。電源スイッチにはロックが付いていますが、スイッチを単純に物理的にロックしているのではなく、
時計内蔵で、アラームやスリープの機能があります。海外放送現地の時間がすぐに分かるよう、時刻はLOCALとWORLDの2つが設定でき、ボタンで簡単に切り替えられます。また、トーン切替スイッチが付いています。各チャンネル1石のアクティブタイプのフィルターが使われています。
前期型と後期型があり、仕様や外観は同じですが、キャビネットとシャーシの構造が少し変更になっているようです。前後キャビネットを留めているタップネジが、前期型は30mm、後期型は25mmとなっているようです。最初の写真及びメンテナンスに載っているセットは、前期型になります。
内部は2枚の基板で構成され、フレキシブル配線板で接続されています。片方はマイコン基板で、PLL、LCDのドライバー等の機能を持つLSIが中心です。後側の基板はラジオ受信の回路です。大変複雑な回路で、マニュアルを見た感じでは、ICが8個、TRが44個も使用されています。
マイコン基板には、3つのICがあります。μPC1724GはLCDユニットで隠れて見えませんがNEC製で、PLLシンセサイザーとLCD制御用です。その他セイコーのS-80728(ボルテージディテクタ)、ロームのBA10393(コンパレータIC)です。
メインのチューナー基板には、ICが5つ使われています。CXA-20111はこの頃よく使用されていたソニー製のICで、FM/AMのフロントエンド～IF増幅までをカバーするICです。このラジオではSWについては、高周波増幅、デュアルコンバージョン、IF増幅の回路が別立てで組まれています。LA3335は三洋製のステレオ処理用ICです。CXA-1552はステレオパワーアンプICです。その他の2つは電圧レギュレータのようです。
SWの高周波回路はFETが多用されています。高周波増幅は2SK508が使用されています。そのあとの、初段の10.7MHzへの周波数変換、2段目の450kHzへの変換、初段のIFもFETです。その先はチューナーICのCXA20111のIF入力へと導かれます。感度切替は高周波増幅の手前でアッテネータが入ります。

仕様

発売:

1993年 (平成3年)

電源:

単3x3 (4.5V)

トランジスタ等:

8IC, 44TR

音声出力:

240mW (10%歪)

バーアンテナ:

100mm

スピーカー:

66mm *3

操作部:

Button: LOCAL/WORLD, Preset 1-5, BAND, BATT/DST, KEY PROTECT, SCAN/STANBY, SW BAND SELECT/ALARM, ENTER/TIME, TUNE/TIME SET(+/-), SLEEP POWER, RESET
Switch: TONE(MUSIC/NEWS)、FM/SW SENS, MW STEP
VR: VOL

表示等:

LCDパネル、同調LED

受信周波数:

MW:: 531 - 1710 kHz (Step 9kHz)
SW:: 3700 - 4200 kHz (75m)
: 4650 - 5150 kHz (60m)
: 5800 - 6300 kHz (49m)
: 6950 - 7450 kHz (41m)
: 9375 - 10000 kHz (31m)
: 11525 - 12150 kHz (25m)
: 13375 - 14000 kHz (21m)
: 15000 - 15600 kHz (19m)
: 17450 - 18100 kHz (16m)
: 21450 - 21950 kHz (13m)
: Step 1kHz (Scan), 5kHz (Manual)
FM:: 76.00 - 108.00 MHz (Step 0.05MHz)

中間周波数:

MW:: 450 kHz
SW:: 1st 10.7 MHz / 2nd 450kHz
FM:: 10.7 Hz

ターミナル:

イヤホン、DC IN 4.5V

シリーズ:

ワールドバンドレシーバー

サイズ:

W x H x Dmm

重量:

色:

黒

製造:

日本製

価格:

19,800円 (税別)

*1　本体記載　　*2　商品のしおり　　*3取扱説明書

使い方

ボタンがたくさん付いており、使い方がやや複雑ですが、ワールドバンドレシーバのシリーズの機種は、特に同世代のものは似た操作方法が多いです。以下、概要です。

時計設定

ロックを外して電源はOFFの状態で、LOCAL/WORLDでLOCALを選び、ENTER/TIMEを押しながら、TUNE/TIME SETで時刻を変更できます。その後、WORLDを選び同様に設定しますが、こちらは時間のみ設定できます。電源OFFで、BATT/DTSボタンを押すと、それぞれの時計にサマータイムを設定できます。

チューニング

ロックを外して電源ボタンを押します。受信バンドはBANDボタンで切り替えられます。SWの10のバンドは、SW BAND SELET/ALARMを押しながら、TUNE/TIME SETで切り替えます。以下の3つのチューニング方法があります。

マニュアル：TUNE/TIME SETで周波数を変更してチューニングします。
スキャン：SCAN/STANDBYを押すと、周波数が自動でアップしていき、放送を受信すると2秒停止します。ほっておくと次のスキャンに移るので、そこで止めたい場合はもう一度SCAN/STANDBYを押します。
プリセット：マニュアルチューニングで、選局後、ENTER/TIME SETを押しながらプリセットボタンを押します。音は鳴りませんが、LCDにプリセット番号が表示されます。選局は、プリセットボタンを押すだけです。各バンド毎に、プリセットは独立しており、最大15局がセットできます。

アラーム・スリープ

アラーム：ロックを外した状態で、電源を入れずに、SW BAND SELECT/ALARMのボタンを押しながら、TUNE/TIME SETで時刻を変更できます。その後、SCAN\STANDBYを押すと、アラームがセットされ、LCDにSTANDBYが表示されます。
スリープタイマー：ロックを外して、電源ONもしくはOFFの状態でSLEEPを押します。LCDにSLEEPが表示され、約60分で電源が自動でOFFになります。

その他の機能

FMステレオ・モノラル：側面のスイッチで変更することができます。イヤホンで聞くときはステレオにするとステレオで聴けます。スピーカーで聞くときや、イヤホンでも電波が弱く雑音が多い場合はモノラルに切り替えると受信状況が改善される場合があります。
トーン切替：MUSICとNEWSの2ポジションがあります。それぞれの放送に適した音質に調整されます。
バッテリーチェック：電源ON時に、BATT/DSTを押すとバッテリーの状態が表示されます。白抜きの四角が3個あり、消耗すると2個、1個となり、電池切れになる3つが点滅します。

メンテナンス

音がものすごく小さい音でしかなりませんでした。オーディオICの手前にあるトーン切替スイッチの不良でした。

振ると、からから音がなってました。キャビネットのスピーカーを固定している部分が折れてしまっていました。あと、本体の角部が破損して欠損していましたので、パテで埋めて塗装しました。

メンテ後のコンデション

★★★★☆：受信・操作OK、本体の破損部はパテ補修。

詳細

ざっと清掃されていましたが、スピーガーグリルの穴やスイッチの部分は埃が詰まっていました。

ビス4本外せば裏蓋は取れます。爪もそれほどきつくありません。PLLのDCDCコンバーター、SWの局発回りはシールドされています。この基板は前面の基板とフレキコネクターで接続されていますので、まずはシャーシごと外す必要があります。

奥のビスを1か所外すと、シャーシは丸ごとと取り出せます。前側にはマイコン基板があります。スピーカーは埃がひどいです。

キャビネット前側です。このモデルはボタンが多いですが、ボタン自体はすべて基板上にあり、プラスチックのボタンを通して操作しています。

この状態で動作確認できますが、基板右上端のマイクロスイッチは、ロック解除ボタンですので、セロテープかなにかでONにしておく必要があります。

受信はしていますが、音がかなり小さいです。

2つの基板は、フレキシブル配線板でつながれています。コネクターは白い部分を引張り上げると緩むタイプです。シャーシの分解は容易です。

マイコンユニットを外したところです。マイコン周りは雑音源となるので、しっかりとシールドされています。大き目立つフィルムコンデンサーは、PLLのループフィルターに使われているようですが、1μFもあります。

チューナー基板はビス1本と爪4か所でシャーシについています。パーツ実装側はケミコンやIFT等の大型部品があります。

チューナー基板のパターン側です。半導体類はほとんどが表面実装で、こちら側にあります。

音がひどく小さいことから、パワーICの出力コンデンサーあたりの不良かと思いましたが、パワーICの入力に信号を入れると普通に鳴りました。その上流のステレオ復調のICの出力から信号を入れるとNGでした。この間にはトーン調整回路がはいっていおり、その切替スイッチの接触不良でした。分解ぜず、エタノール・接点洗浄剤で回復しました。

シャーシは製造時期により少し形状が異なるようです。こちらは前期のもののようです。

落下させたのか、角が折れて大きな欠損があります。

からからする音は、スピーカーを止める金属棒を支える部分が折れてしまっていました。

欠損部はパテで埋めました。固まってきたら、カッター内部とサンドペーパーで形を整えました。

スピーカの支えは、エポキシ系の接着剤で留めてみました。

金属棒をひっかけてみました。一応は止まったかに思えましたが、力がかかる割に華奢な部品で接着面が狭く、組立てた翌日には外れてしまいました。

パテは手元にあった適当な黒の塗料で塗りました。やや黒がきつすぎる感じじですが、そこそこ自然な感じにはなりました。

組立て最終動作確認しました。

スポンジテープは粘着部のみになってしまっています。元の厚みが分からないので、1mmのスポンジを貼りましたが、やや緩い感じです。

がっちりと固定する必要もないかと思い、シリコン系の柔らかいスーパーXでリトライしてみました。今のところ固定できています。

カタログ情報等

製品のしおり

製品のしおり87 (1997), p88

安定した受信と一発選局のPLLシンセサイサーチューナーでお求めやすい価格を実現。文庫本サイズのワールドバンドレシーバー
FMステレオ/MW/SWI~10PLLシンセサイサーレシーパー
ICF-SW30　標準価格19,800円(税別)
付属:キャリングケース、乾電池、巻き取り取納式コンパクトアンテナ、ウ工ーブハンドプ

安定した受信と簡単チューニング
FM/MW/SW各5局計15局の周波数メモリー可能
国内、海外の2カ所の時刻を瞬時に呼び出すワールド/ローカルタイムクロック
お好きな時問に希望の放送局のスタンバイ設定が可能

電池持続時問:約13時間(sw時)
大きさ:幅169X高さ111X奥行35mm
質量:448g

2024/10/24

No.231