SONY ICR-3300

概要

• AM専用のポケッタブルラジオです。1979年の発売のようですが、ICRの4桁番号はこのラジオが最初なのかもしれません。ICを使ったポケッタブルの割には大きめです。高周波増幅による高感度を売りにしています。だいぶ大きくなり、10年以上の間が空いていますが、系列としてはICR-200の流れを組むものではと思います。
• 1970年代後半からソニーの廉価ならラジオは香港製のものがあり、これもその一つです。
• 1979年に同じように高感度を売りにした、ICR-S1を販売しています。いずれもMW専用、廉価で高性能という路線ですが、こちらは、よりコンパクトなモデルという位置づけのようです。ICR-S1は、当初ワンチップICラジオとして発売されたものの、途中でトランジスタラジオとなってしまっていますが、こちらはワンチップではない別のICを使用していることから、最後までICが使われたようです。
• このラジオはオークション等でもあまり見かけないように思います。インターネット上の情報もあまりありません。ICR-S1が後継機種ということで、製造された期間が短かったのかもしれません。
• スピーカーグリルの部分はアルミに塗装ほ施したものですが、塗料がぼろぼろはがれることが多いようです。購入したものも、爪でこするだけでどんどんはがれてきました。この部分が銀色のICR-3300を見つけて色違いかと思い購入しましたが、単に塗料がはげたもので、同じもの2つ買ってしまいました。
• 本体に"RF"の表記がある通り、高周波増幅回路が採用されており、これをセールスポイントにしているようです。高周波増幅自体は、初期のトランジスタラジオでも適用されていますが、FETは入力インピーダンスが高く、微弱な電流の高周波増幅に向いているようです。そのため、FETが普及し始めた、1970年ごろからラジオの高周波増幅に使われ始めていますが、1980年という時期は、やや宣伝するにはインパクトが弱い時期だったかもしれません。
• バーアンテナは50mm程度で、ICR-S1よりもかなり短くなっています。つまみ類を側面配置にすれば、十分に長いバーアンテナがつけられたと思うのですが、RF増幅があるからOKなのかもしれません。チューニングは目盛板も長く、プーリーを用いてしっかり作られています。電力増幅は、入出力トランスを用いたプッシュプルです。
• ICR-S1の前期（ICバージョン）は1-ICですが、このラジオそれ以後の発売にも関わらず、IC以外に結構トランジスタが使われています。このICは、中間周波増幅、局発を担当しているようです。高周波増幅に2SK105、ミキサーに2SC710、あと低周波はドライブアンプ2石(2SC945)、電力増幅は2石(2SC2001)で、トランジスタは合計5石使用されています。ICはシールドがあるため詳細が分かりませんが、マニュアルからはCX162という型番のようです。

仕様

発売*：

1979年(昭和54年)5月

電源：

単3 x 2

トランジスタ等*：

5 TR,　1 IC

バーアンテナ：

約50mm

スピーカー*：

50mm

音声出力*：

150mW (EIAJ)

操作部：

電源SW付ボリューム、チューニング

表示等：

なし

受信周波数：

AM:

530 - 1605 kHz

ターミナル：

イヤホン

サイズ：

W130mm x H62mm x D30mm

重量：

190g (電池別)

色：

黒

製造：

香港製

価格：

3,800円

メンテナンス

音は出ますがボリュームの調整が全くできず、ボリュームの位置によらず最大音量という感じでした。内部を確認しましたが、ボリューム部分にCRC556のような非揮発性の潤滑スプレーが大量の振りかけられており、周りがべとべと状態でした。

裏蓋を外したところです。はめ込みのみで、ビス類はありません。イヤホンの下の部分の、下側の2箇所に爪があり、前面パネルを広げるようにして外します。

基板部分もはめ込みなので、外れます。裏蓋は電子部品がありませんので、丸洗いしました。

チューニングのメカです。糸とプーリを使ったものですが、しっかり作られており、チューニング操作では苦労しなさそうです。

チューニングつまみを外したとろこです。こんなところにこっそりとICR-3300の銘が入っています。オイルがこのあたりまでしみわたり、ほこりとともにべたべたになっています。このラジオはボリュームのつまみとバリコンが離れた場所にあったため、バリコンへの油の直撃が避けられたのは不幸中の幸いでした。

油汚れがひどいため、基板につけられているプラスチックのフレームを外しました。油汚れがひどいため、洗剤で丸洗いしました。基板も油まみれでしたので、入念にふき取りました。

動作のおかしい可変抵抗ですが、写真では隠れてしまっていますが、中までで油が入り込み、そのためなのか、炭素皮膜が一部はがれてしまっていました。カバーには10kΩと記載されていましたが、低音量側の皮膜がなくなったため、両端で23kΩ、絞り切った状態でも13kΩあるため、音量調整が効かない状態でした

FET 2SK105です。まだ一部のパーツ店で入手できるようです。

装が劣化したのか、もともとのりが悪いのか、ボロボロ剥がれきてしまいました。

一度全部はがしました。この後水性塗料で塗りましたが、仕上がりはいまいちでした。

ボリュームですが、はがれた部分へ導電性の塗料で修理を試してみました。見た感じは悪いですが、これで23kΩ→10.2kΩとだいぶ回復しました。Minでも200Ωありますので、ゼロまでは絞れませんが、十分に音量を絞り、調整できるようになりました。

組み上げて復旧しました。

可変抵抗の修理に使った導電性塗料です。結構高額です(2000円)。導電性ではありますが、銅線のように電気が通るわけでなく、形状次第で結構抵抗はあります。乾燥に15分かかります・乾くまでは大きな抵抗を示します。

カタログ情報等

商品のしおり

商品のしおり33 (1997/10), p44

つまみを上面に配置
小型でも乾度良好、中波専用
ICR-3300 ¥3,800

• ICを採用し、FET･RFアンプ内蔵で、小型でも乾度良好
• つまみ類を上面に配置
• ハンドストラップ付、イヤホン付属

2018/03/13, Update 2022/12/28

No.081

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