SONY ICR-AX21

概要

ICR-AX21は、AMステレオ放送が聴取できるポケットラジオです。AMステレオ放送は1992年に開始され、当時は通常のAMよりも広い帯域、スポーツの臨場感が得られるステレオということで、大分と期待されてていました。このラジオは1992年にそれに合わせて発売されました。ポケット・イヤフォンタイプのステレオAMラジオとしては、ソニーの一号機です。
シャツのポケットに十分入る、いわゆる名刺サイズです。アナログ式のラジオですが、多数のICが使われ基板も表面実装で緻密です。前面にはスピーカーはありませんが、デザインとしてなのかアルミのパネルが使用されています。ソニーのAMステレオ対応のラジオ付けられていた「AM」を図案化したロゴが前面右下に付けられています。本体の下部にはバーアンテナが設置されているためか、この部分は樹脂になっています。
写真のものはシールが貼られたままになっていますが、オークションでもシールが剥がれていない物をよく見ます。ビニール製のキャリングケースが付属しており、電池交換以外は付けたままで差支えなく、ケースをつけるとこのシールは完全に見えなくなるので、そのままになっているケースが多いみたいです。年月が経っており、剥がずと後が残りそうですので、そのままにしています。
発売翌年の1993年のカタログで、すでに生産完了品になっています。全く同サイズで本体はほぼ共用、FMとTV(1-12)が聴取できるSRF-AX51Vが、1993年に8400円とあまり変わらない価格で発売されました。このラジオのダイヤルスケールの部分は、上下方向にゆったりしており、ダイヤル針も1バンドラジオには不必要に大きなものがついていますが、もともとSRF-AX51Vを後継とする予定だったのかもしれません。この後発売されたAMステレオを受信できるラジオは、FM/AM2バンドになっているようで、ソニーのAMステレオ専用機はこれ1機種みたいです。
AMステレオ放送は、期待された割にはあまり広まらず、最終的には全国で16局しか開局されませんでした。NHKが参加しなかったことや、モノラルのAMに比べてより良い電波状態が必要で、受信機も割高感があったことなどによるようです。放送機メーカーが製造を取りやめたたことから、更新も困難となっており、現在(2021年12月)は３局を残すのみになっています。最後のAMステレオ放送はちょっとしたニュースになるのかもしれません。
型番にあるaxは、アナログチューニングのAMステレオに対応した機種に付けられたようですが、この時期の3機種のみに使用されて、その後はAやMが使用されています。
小さいラジオですが、AMステレオ対応とするために、通常のAMラジオより相当複雑で、表面実装のICが５個使用されているようです。
- CXA1111N:　背面側に付いていますが、AM/FMの局発・ミキサーから検波まで一通り対応できるICです。復調前の中間周波を取り出すことができるため、AMの局発、混合、中間周波増幅の部分だけが使われているようです。
- CXA1522N:　ステレオ2チャンネルの低周波増幅用のICです。形状の異なる3グレードあり、ここで使われている一番容量の小さいものでも、95mwの出力で十分にスピーカーを鳴らすことができますが、ここではイヤホンの駆動に地味に使用されています。
- CXA1657N, CXA1758Nは:　データシートは見つけられませんでしたが、日本で採用されたモトローラ方式のAMステレオに対応した検波・ステレオ復調用のICのようです。
- BU2300AF: BUはローム電子のクロックICに使われている型番で、電子スイッチ・自動電源OFF用に使われているようです。
トランジスタ4石は、LEDのドライブや電子スイッチ動作に使用されています。

仕様

発売：

1992年

電源：

単4x2 (3V)

トランジスタ等：

5 IC, 4 TR

音声出力：

4 mW + 4 mW

バーアンテナ：

約50mm

操作部：

電源スイッチ付きボリューム、チューニング、STEREO/MONO切替SW

表示等：

チューニングLED

受信周波数：

MW:: 530 - 1605 kHz　（ステレオ）

ターミナル：

イヤホン (2.5mmステレオ)

サイズ：

W57mm x H95mm x D17mm

重量：

70g(電池別)

色：

黒（ダークグレー）

製造：

日本製

価格：

6,800円（税別）

メンテナンス

動作は問題ありませんでした。ケースに入っていたこともあり本体もきれいです。ケースはタバコくさく、なかなかにおいは取れませんでした。清掃と内部確認のみです。

内部です。本体基板は裏蓋側に付いてきます。電池ボックス内にビスが1本あります。これを外せはあとは爪を外します。側面にたくさん線が入っていて、どこで割れるのかわかりにくいです。

ダイヤルスケールの部分が、外観からして大きなものが付いていますが、SRF-AX51との部品共有のためと思われます。チューニングメカは糸とプーリーを使ったものです。

電池のマイナス極のはんだ付けを取らないと、裏蓋と基板は分離できなさそうでした。ラジオは快調に動作していますので、ここまでにしました。

前と後ろ、分離後の横からの写真になります。分割線の確認用です。

カタログ情報等

商品のしおり75

AMステレオ放送専用のお手軽価格の名刺サイズラジオ
AMステレオポケッタブルラジオ
ICR-AS21
付属：ステレオイヤーレシーバー、キャリングケース、乾電池

AMステレオ放送専用
携帯に便利な名刺サイズ
チューニングインジケーター付き
ステレオ/モノラル切替スイッチ付き
ステレオイヤーレシーバー付属
電池持続時間：UM-4（NU）使用時、約17時間（AMステレオ時)

2021/12/17