SONY SRF-85

Serial No.1830656

概要

SRF-85はFM/AM2バンドのポケットサイズのラジオです。スピーカーは搭載されておらずイヤフォン専用ですが、FMはステレオ放送を聴取できます。色を合わせた黄色のステレオヘッドセットが付属していました。FM受信時はイヤフォンがアンテナになるタイプです。
この頃ソニーは、屋外での運動中等での使用を想定したにオーディオ家電をSPORTSというシリーズで発売しており、このラジオもそのラインアップの一つです。運動しながらというヘビーデューティな使用を想定しているようで、本体は自立せず、腰のベルトに挟むクリップと、腕に取り付けるアームバンドも付属していました。
SPORTSシリーズは、いわゆるウォークマンや、CDプレイヤーなど、いろいろと発売されていました。黒もありますが黄色のものをよく見ます。丸みを強調したデザインが多く、全般にいまでも人気があるように思います。この頃にはWALKMANのブランドは、カセットプレイヤー以外にも付けられるようになったようで、このラジオはFM/AM WALKMANと表示されています。
このモデルは海外向けにしか発売されたかなったようで、日本の通常のFM放送を聞くことはできません。しかし、2014年から始まったFM補完放送(90-94.9MHz)を放送域をカバーしています。販売場所により受信周波数が若干異なるようですが、写真の個体は、FCC Part15(アメリカのEMC規制）に適合している旨のシールが貼ってありました(剥がれてしまいました)ので、アメリカ向けのようです。
防水性能はマニュアルには記載さえていないようですが、水中に沈めることはできないと書かれていますので、従前のSONYの防水ラジオ同様の防滴仕様と思われます。電池ボックスを除き、ガスケットやオイルシール等で防水対策されています。電池ボックスは水が入る構造ですので、水があたる環境で使った場合は、電池室の拭きとり等が必要です。しっかり防水されていますが、気温の変化等に対応するためか完全密閉ではなく、裏側の中心にある丸い部分はブリーザーになっているようです。
このラジオにはAVLS(Automatic Volume Limiter System)という、ボリュームの位置によらずに極端な大音量をセーブする機能がついています。ポジション1で95dBに、2で85dBに制限されるとなっています（1でライブハウスの音量ぐらいでしょうか）。出力信号を拾ってレベルを調整した後に、入力側に負帰還するような回路になっています。この名称の機能は、仕組みは同じではないかもしれませんが、現在のソニーのポータブルプレイヤーにも使われています。
1チップICラジオではなく、ICとトランジスタが併用されています。ICは2個使用されており、一つは、ソニーのCXA1126Nで、AM/FM STEREOの検波までの機能を持つICです。もう一つは、三洋のLA4735で、1.5Vで動作するステレオヘッドホン用の低周波増幅用ICです。
トランジスタはデュアルのものが2個、通常のものが2個使用されています。デュアルのトランジスタは表面実装タイプで、手持ち物ものは型番が記載されていませんが、サービスマニュアルを見るとローム製のようです。AVLSの回路を組むために使用されています。
電源とAM/FM切替のスイッチは機械式ですが、このスイッチで直接回路を操作せずに、トランジスタで間接的操作しており、ここに2SA933が2個使用されています。イヤフォンを付けた状態でスイッチを操作して、耳障りな音がしません。

仕様

発売:

1992年 (平成4年)

電源:

AA(R6)x1* (単三x1, 1.5V)

トランジスタ等:

2 IC, 4TR*　(TRのうち2個はデュアル)

音声出力:

3.6mW + 3.6mW (歪率10%)*

バーアンテナ:

L=50mm

スピーカー:

なし

操作部:

電源スイッチ、バンド切替スイッチ、ALVSスイッチ、ボリューム、チューニング

表示等:

なし

受信周波数:

【北米向け】

AM:: 530 - 1710 kHz
FM:: 87.6 - 108 MHz

【その他の地域向け】

AM:: 531-1602 kHz
FM:: 87.6 - 107.5 MHz

ターミナル:

イヤホン(3.5mmφステレオ、FMアンテナ兼用)

シリーズ:

FM/AM WALKMAN, SPORTS

サイズ:

Wmm x Hmm x Dmm

重量:

約1015g

色:

黄色/グレー

製造:

マレーシア製

価格:

メンテナンス

動作は問題なく、外観もきれいでした。内部の確認のみで、特にメンテ事項は無しですが、液状ガスケットでシールしている裏蓋を開放しましたので、防水性が怪しくなってしまいました。

あまり使用感はありません。スイッチ類は内側の爪を外さないと取り外せない構造です。ボリュームのつまみは外側から外れ、基板を前面パネルから外す前に、このつまみを外す必要があります。それ以外の操作部は中でスイッチとかみ合っているだけなので、そのままで分解できます。

ビスを4本外すと裏蓋が開きますが、防水性を高めるために接合面に液状ガスケットが塗られています。外部との接点になる、電池電極の部分は特に入念にシールされています。一度開けると一部切れてしまいますので、もう一度ガスケットを塗って閉めない防水性が担保できなさそうです。また、中を確認したくなるかもしれませんので、今回はそのまま再塗布せずにそのまま占めています。

ダイヤル指示針はラックアンドピニオンで動かすタイプです。基板はパターン面が表面実装になっており、2つのICはこちらの面に付いています。真ん中に見えるICがCXA1126Nです。

こちらのもう一つのICで、4537とプリントされています。周波増幅用のLA4537のようです。

バリコン、コイル、ケミコン等の大物の部品が実装面側に取り付けられています。電極やスイッチ類等、電子部品はすべて基板に取り付けられていますので、分解しやすいです。

こちらはパターン＋表面実装です。

チューニングのメカが付いていますが、爪3か所で簡単に外すことができます。

ボリュームのつまみはオイルシールでシールされています。グリスが内側に出てきていたので、外側に出しました。拭きとって新しいグリスを塗ったほうがよかったのかもしれません。

2022/02/14