SONY SRF-A300

Serial No. 20783

概要

ソニーSRF-A300はFM/AM 2バンドのポータブルラジオです。AMステレオ放送が開始された翌年の1993年に発売されており、日本で発売されたソニーのAMステレオ対応のポータブルラジオとしては、最初のモデルと思われます。

ハンドルはありませんが、キャリングベルトが付属しており、ポータブルラジオなのかもしれませんが、最近のが、2スピーカーであることもありかなり大きめのサイズで、重量も1kgを超えで、100V電源に対応していますので、据置で使用されることが多かったのかもしれません。
AMステレオ放送は1992年に放送が開始されましたが、まずはポケットタイプのラジオが発売されて、このポータブルは1年遅れての発売になっています。特に高性能を目指したものではなく、機能を基本的なところに絞って、操作しやすくコストを抑えた造りになっているように思います。
2010年頃までは発売されていたようですので、比較的長い期間モデルチェンジせずに製造されていました。AMステレオ放送の衰退もあり、本モデル（AM/FMステレオ対応、2スピーカー）は後継機種は発売されていないようです。
1980年代前半にアメリカではすでにAMステレオ放送が開始され、すでにソニーはSRF-A100, A200というモトローラ方式のAMステレオを受信できるラジオをアメリカで販売していたため、このラジオの型番はそれにつなげて、SRF-A300となったようです。このラジオの前に発売されたAMステレオラジオは、番号の前にAXが使われています。
電源は通常の機械式のスイッチの他に、おやすみタイマーのスイッチがあります。タイマースイッチは、電源OFFの状態で押すと、ラジオがONになり60分後に自動的に切れます。聴いているときにもう一度押すと、電源OFFになります。
このラジオの電源スイッチは余り出来が良くないようで、経年により電源が切れなくなるケースがあるようです。写真のラジオは、OFF側に押し付けると電源は切れるものの、普通にOFFにするとラジオは切れますが、通電しているようで、スピーカーからノイズが聞こえるという不具合がありました。
ダイヤルライトは電池駆動の時はライトボタンを押すと付きます。明るさは控えめでぼんやりと光る感じです。AC100V使用時は、100V から個別に電源が供給されるようになっており、付きっぱなしになります。ダイヤル針や、受信位置のマーカーは緑色になっており、ダイヤルライトの緑のLEDに合わせたようです。
大きな躯体でスピーカーもしっかりしており、アンプの出力もあります。カタログでも良い音を売りにしており、しっかりとした音で鳴ります。ただ、同時代の大型のポータブルラジオ(ICF-780等)と比較すると、スピーカーがやや小さいこともあってか、やや負けているかもしれません。
分解整備がやり易く設計されているように思います。要所にはコネクターを使っているので各パートが分離しやすいですし、操作用の部品類もすべて基板付けにしつつ、つまみとは簡単に分離できます。基板を簡単に分離できるため、修理・調整もしやすいです。また、基板自体も各部の機能や調整箇所等の説明が印刷されており、分かりやすいくなっています。
AM/FMともステレオということもあり、ICは全部で7つと、たくさん使われています。AM/FMのフロントエンド・IFにはソニーのCXA20111が使われています。FMステレオ復調には三洋のLA3335、AMのステレオ処理はCXA1758(シールドの中で確認できませんので推定ですが)でMain/Subを分離し、CXA1657でステレオ音声としています。
低周波のプリアンプは772と書かれたICが使用されていますが、文字が見にくくはっきりしませんが、2回路入りのテキサスのオペアンプLMV772と思われます。電力増幅にはソニーのIC CXA1522Pが使用されています。あともう一つは、スリープ機能のために、タイマーICのBU2302が資料されています。はCXA1522を除いては、表面実装タイプです。
トランジスタは基板をみたところでは、メイン基板に7個、電源基板に1個の8石です。電源基板には2SC2001が、メイン基板には2SA952が一つ使われており、残りは、表面実装タイプです。

仕様

発売:

1993年 (平成5年)

電源:

単3x4 (6V), AC100V

トランジスタ等:

7(?) IC, 8(?) TR

音声出力*:

300 + 300 mW

バーアンテナ:

100 mm

スピーカー:

77mm*, 1W, 8Ω (x2)

操作部:

電源SW、ボリューム、チューニング、バンド切替SW、ST/MONO切替SW、ダイヤルライトSW

表示等:

同調LED

受信周波数*:

AM:: 530 - 1605 kHz
FM:: 76 - 90 MHz

ターミナル:

イヤホン(3.5mm/ステレオ)

シリーズ:

サイズ:

W280mm x H140mm x D75mm

重量:

1120g

色:

黒

製造:

日本製

価格:

10,800円（税別）

*取扱説明書より

メンテナンス

アンテナが欠品でした。内部清掃・確認のために開放すると、樹脂製のシャーシが2か所破損していました。動作は正常に動作しているように見えましたが、電源をOFFにするとラジオの音声は止まりますが、スピーカーに耳を近づけると小さいノイズが出ており、通電しているようでした。

アンテナは、この頃の同サイズのラジオ間で共通のようです。ICF-800のものをとりあえず取り付けましたが、同サイズのものを探しています。樹脂の割れは2液アクリル系の接着剤で留めました。

電源が完全に切れないのは電源スイッチの接触不良のようです。通常の電源スイッチの他、タイマーを動作させるためにスイッチは2回路になっていますが、そちらの回路が完全に切れないようでした。接点用スプレーでも回復しないため、スイッチの分解清掃して回復しました。

ネジ6本を外すと裏蓋が取れます。爪などもなくスムーズに外せます。基板は上部に水平についています。奥行があるラジオなので、この配置でも充分なサイズを確保できそうです。

2つの基板はプラスチックのシャーシにのっています。シャーシはボリュームのつまみとビス2本外せば取り出せます。ダイヤルライトスイッチが少し引っかかります。

ボリュームは重みのある操作感ですが、粘ちょうなグリースのようなものがべっとり塗られていました。

基板はビス5か所外し、シャーシの爪を外せば取り外せます。スピーカー2つの接続、電源基板との接続はコネクターになっているいます。はんだを取らなくても基板が取り出せます。端子のケーブル側の部分を、引き出すと、ケーブルが緩んで取り外せます。小型のRC類はパターン側に表面実装ですので、すかすかの配置です。

実装側にはパワーアンプのIC CXA1522Pが見えます。

1か所シールドに囲まれた部分があります。中身は見えませんが、ソニーのAMステレオラジオでCXA1657と合わせて資料されている、AMの信号分離用のCXA1758と思われます。

スピーカー接続用のコードのルート確認用です。

コネクターは一部引き出すとコードが外せます。基板に書かれている色の説明と、実際のコードの色はなぜか異なっています。

AC100Vのコードは、丸い部分に巻き付けるのではないかと思うのですが、開けたときはそうなっていませんでした。

トランス・電源基板をシャーシに固定するネジの受け側が破損していました。

電源基板との接続コネクターです。3ありますが、GNDと電源の他、LED点灯用の電源が、電源基板から供給されています。

チューニングの部分です。ピニオンとラックを外せば針の位置は簡単に調整できます。

電源基板です。トランス・電池の電極両方ともここに取り付けられています。トランジスタを使ったリップルフィルタが付いているようです。ダイヤルを照らすLED用の電源は、100V側の電源から押しボタンスイッチとは別に供給されているようです。

ビスを5本を外し、爪を外すと基板が分離できます。

スケール部分が割れていました。

周辺部品外して確認しました。接着剤で貼り合わせました。

メイン基板、配線側です。ICがずらりと並んでいます。

この状態で動作確認しました。

トランスを固定するネジの受け部分は接着剤で固定しました。一応締め付けられました。

復旧しました。電源コードは丸く作られたスペースに一巻きしました。

クッションは剥がすとかたかた鳴りましたので、厚さ1mmのものを貼り付けました。

組み上げ後、電源が完全に切れないという不具合を発見し、再度分解しました。スイッチは接点洗浄剤では完全には復活しませんでした。

4つの爪を外して分解清掃し回復しました。何度も分解はできなさそうです。

カタログ情報等

製品のしおり

製品のしおり75 (1993), p85
大きなホタンと日本語表示で使いやすい。FMステレオ/AMステレオのタブルステレオでよい音か楽しめる。ラジオファンにおすすめの1台
FMステレオ/AMステレオポータブルラシオ
SRF-A300 標準価格10,800円(税別)
付属:イヤホン、乾電池、ストラップ

FMステレオ/AMステレオのダブルステレオ
大きなホタンて操作しやすい
日本語表示

電池持続時間:約14時間
大きさ:幅279.5 x 高さ138.5 x 奥行75mm
重さ:約1.3kg

2023/4/18

No.173