SONY TFM-110D

Serial No. (未確認)

概要

ソニーTFM-110Dは、1966年発売の、FM/SW/AM 3バンドのポータブルサイズのトランジスタラジオです。ソリッドステート11のニックネームがつけられていました。

ソリッドステート11のニックネームは、前モデルのTFM-110とこの機種の後継のTFM-110Fの3台に使用されています。当時は多くの機種に、「ソリッドステートxx」というニックネームがつけられており、カタログにモデル番号の記載がないケースもありました。ソリッドステート10(5F-90)はAM/FM2バンドのラジオで、TFM-110はその兄貴分の3バンドラジオでした。
トランジスタは前機種のTFM-110から1石増えて12石ですが、TFM-110がイレブンと呼ばれヒットしたことからか、ソリッドステート11の名称がそのまま継承されたようで、イレブン③兄弟のす。本体シルバーでスピーカーグリルは黒、正方形に近いデザインに大きな変更はありませんが、前面左上にあった"FM/SW/MW"の文字が削除され、シンプルな表記になっています。
イレブンシリーズのラジオは、従前のラジオよりも明確に感度が高かったようで、大ヒットしました。1965-70年頃のラジオ好き少年には憧れの的だったようです。ICが使用される前のオールトランジスタラジオであるTFM型番としては、イレブンシリーズは一つの完成形と思われます。
当時、日本ではFMの試験放送が開始されており、このラジオもFMの高感度を売りにしていました。また、FMステレオ放送を楽しむための、同じデザインのステレオアダプターSTA-110Dも同時期に販売されていました。SWも感度がよく、田舎の木造宅では、夜はロッドアンテナで多くの局が聞けます。
ビス類も多く、内部は多くのパーツが独立配置されて、分割された基板からたくさんのコードがでている複雑な構造で、メンテ性は最悪です。高周波回りの基板は雑音対策か密集度が高く、部品の取り外しも大変そうです。写真のセットは幸い動作に問題なく、内部の確認清掃だけで済みました。バリコン、VR、トーンSW、MPXジャック、イヤホンジャック、DCジャック、照明、照明SW、電池金具、基板4枚がバラバラに配置されており、これらが配線接続されています。
TFM-110からのモデルチェンジに伴い、トランジスタが1石増えただけでなく、ゲルマニウムタイプに替えてシリコントランジスタが多く使われています。パワーアンプのプッシュプルにはゲルマニウムの2SB383x2が使われていますが、その他の10石はシリコンタイプのようです。この頃使用されていた、型番がよくわからない小さいモールドタイプのものが使用されています。一部は、同年代に広く使われていた、TX-128というソニー独自型番(ハウスナンバー)のトランジスタかもしれません。

仕様

発売:

1966年 (昭和41年)

電源:

単2x3(4/5V), DC 4.5V

トランジスタ等:

12 TR

音声出力:

300mW (無歪), 500mW(最大) *3

バーアンテナ:

160mm

スピーカー:

100mm x 65mm(楕円) *3

操作部:

電源SW付きボリューム、チューニング、バンド切替SW、トーン切替SW、ダイヤルライトボタン

表示等:

受信周波数:*1

MM:: 530 - 1605 kc
SM:: 3.9 - 12.0 Mc
FM:: 76 - 90 Mc

ターミナル:

イヤホンx2、MPX OUT、 AUT IN、DC IN

シリーズ:

ソリッドステート11

サイズ:

W178 x H128 x D47mm

重量:

833g

色:

黒

製造:

日本製 *1

価格:

13,800円　(現金正価)　*2

*1 本体記載　　*2 製品のしおり　*3 取扱説明書

メンテナンス

ボリュームのガリ、バンド切替SWの接触不良はありますが、動作は問題ありませんでした。振ると少し異音がします。あと、ダイヤルライトボタンが押し込み感がなく、点灯しませんでした。ダイヤルライトについては、キャビネットの固定部分が破損して、スイッチがうまく固定できなくなっていたようです。

メンテ内容

VR,バンド切替SW清掃
スピーカー周りコード取り替え
ねじ受けボス補修
ダイヤルスケール接着
液漏れ清掃

メンテ後のコンデション

★★★★☆：

外回りはアンテナの受けが破損していますが、大きな欠損ありません。ダイヤルライトはその場しのぎ的な修理のため、再故障のリスクあります。

詳細

ラジオの受信は良好でしたが、電池のスリーブ内にも液漏れ跡が多くありました。

後ろキャビネットは爪もなく、ビス3本外せば簡単にとれます。各所に液漏れのダメージがあります。

基板その他パーツがコードでつながっており、電池電極等、まとめて外す必要があります。シャーシに固定されている基板はそのままでいいですが、シャーシを止めているビス類も手間の部品が干渉したりして外しにくいです。

シャーシの前側です。こちらまで液漏れのダメージが来ています。

前側キャビネットも液漏れによるさび色の汚れがなかなか取れません。電池負極金具を固定しているねじ受けが破損しており、接着剤で補修しました。

アルミのスケールが鉄のフレームに接着されていますが、接着剤の劣化で剥がれたため、貼り直しました。

シャーシ前側、目盛板の下にチューニングギアがあります。バリコンとつまみはギア減速でしっかりしたものです。

ダイヤルライトは電球は生きていました。押し釦スイッチが液漏れで接触不良となったようですが、しっかりとしたスイッチではなく、ファイバー紙と金具を重ねてハトメで留めた簡易なものです。

キャビネット受け側が破損したようで、とりあえず接点を清掃して、軟質の接着剤で留めてみました。一応、使えるようにはなりました。

スピーカーのコードが非常に短く整備性を悪化させていましたので、外しついでに長いものに交換しました。

カタログ情報等

製品のしおり

製品のしおり52 (1966), p12

高感度　FM/中波/短波　ポータブル

ソリッドステート11(イレブン)　　　¥13,800 (¥14,500)

本体¥12,500　　皮ケース¥1,300

使いやすさと美しい音質が、みごとにマッチしたトールボーイ型、FMステレオ放送も聞け、拡声装置としても使えます。お部屋では電灯線で、ラジオのすべての魅力を完備。

ステレオアダプター11 ¥9,900

ACアダプターAC-11　　¥1,950

大きさ　180X131X47.5mm

重さ　950g

色　黒

電池　単2x3コ

前機種TFM-110と同じ「ソリッドステート11」の表記のみで、型番が記載されていません。この頃、モデルの型番は表に出さず、ソリッドステートというブランド名を使おうとしていたみたいです。

現在イメージするトールボーイ型というほど縦長ではないように思いますが、トールボーイ型という言葉が使わたはしりかもしれません。最近では、スピーカー等に使用されていますが、もともとは背の高いチェストを指す言葉のようです。

2025/01/20

No.