Sony TR-630

概要

AM専用のポケッタブルラジオです。SONYから無理やりポケットに入れたパソコン（確かに小さかったですが）も出ていましたが、初期のトランジスタラジオ発売時も同じように、シャツのポケットを大きくして、無理やりポケッタブルをアピールしていたと聞いたことがあります。しかし、このラジオはきちんとワイシャツのポケットに入るサイズで、正真正銘のポケッタブルです。
金を基調とした高級感のあるデザインです。TR-610,TR-620,その前身と思われるTR-63も、全体に丸みを帯びたデザインで、ダイヤルやスピーカーなど、丸みを生かしたデザインでしたが、このTR-630は、線を生かしたデザインで、これまでと一線を画しているように思います。TR-610というのは相当売れたラジオだったようですが、このラジオも結構な人気だったようです。
チューニングは小さなダイヤルですが、バリコン直付けではなくプーリーで減速しています。そのため、チューニングはやりやすいですし、表示部をセンターに配置できています。コンパクトなラジオですので、部品の実装はぎゅうぎゅうです。ポケットラジオながら、トーンスイッチも付いています。
回路的にはオーソドックスは6石スーパーラジオのようです。使用トランジスタは、局発・混合は2SC73、中間周波増幅2SC76 x 2、低周波2SC65 x 3の計6個です。

仕様

発売：

1960年(昭和35年)

電源：

006P

トランジスタ：

6 TR

操作部：

電源SW付ボリューム、チューニング、トーンSW　

受信周波数：

BC:: 530 - 1605 kHz

ターミナル：

EARPHONE, ANT

サイズ：

H90mm x W62mm x 28Dmm

重量：

170g

製造：

日本製

価格:

6300円

メンテナンス

受信しないジャンク品ということで入手しました。雑音は多少聞こえますが、放送が聞こえませんでした。
低周波は問題なく、中間周波も問題なさそうでした。局発がうまく動作していないようでした。局発トランジスタのバイアスの抵抗を小さくすると、受信するので対症療法として、抵抗を低いものに変更しました。
電源と高周波回路側の間にある抵抗も同様におかしかった可能性があります。そちらと合わせて調整するべきだったのかもしれません。

低周波にMP3プレイヤーを繋いで確認しましたが、問題ないようでした。中間周波数の信号を近づけると、信号音が聞こえるので局発あたりの故障のようです。

基板を外したところです。この時代のラジオは修理を前提にしていたのか、比較的分解しやすく組立てにもそれほど往生しません。

この発振用トランジスタ周りのコンデンサをチェックしましたが、異常はありませんでした。バイアスの抵抗(10kΩ)は経年劣化のためか26kΩあり、10kΩで試してみましたが変わらず、うんと小さくするとうまく発振するようでした。トランジスタの劣化かなにかなのでしょうか。対症療法として、この抵抗を試行錯誤で、小さなものに変更しました。

リード線の一部が擦り切れたためか、銅線が露出した被覆線がありました。ここは取替えではなく、熱収縮チューブで補修しました。

局発周りの部品はバリコン周りにあり、一度バリコンの配線を外さないとアクセスが難しいです。端子周りの配線も被覆が痛み、抵抗のリードとあたりそうでしたので、この部分も露出部をチューブで被覆しました。

基板部分の修理完了後です。

2009/03/26, Update:2022/02/21