SONY TR-9650

Serial No.100274, オレンジ

概要

TR-9650は、AM専用のホームラジオです。電源は乾電池の他、AC100Vを直接使用でき、据置に便利です。バンドはAMに絞りつつも、最低限の機能に加えて、トーンコントロール、チューニングLEDといった付加的な機能もあり、リーズナブルな価格でありながら、十分な実用性があるラジオです。

AM専用ホームラジオということで、TR-9600の後継と思われますが、デザイン的にはTR-712の頃から継承されてきたホームラジオのデザインから、大きく変更されています。ホームラジオは、昔のテレビや真空管ラジオのように、背面が木質ボードをはめ込んだだけのタイプが多いですが、このラジオは完全にキャビネットに入っています。写真のセットの、カタログ等の表記にそってオレンジと記載していますが、実際には朱色に近いです。
ホームラジオとしてはエントリーモデルだと思いますが、独立した電源スイッチや、トーンコントロール、同調LEDも搭載しています。最大出力は700mW、スピーカーの100mmで音量・音質的にもしっかりしています。
ボリュームとトーンはスライドボリュームです。バーアンテナは160mmと大型で、アースと外部アンテナが接続できるようになっています。
大きなラジオで、内部の基板も大きいです。AMラジオで、回路的には普通の6石トランジスタラジオですので、部品類はゆったりとした取付です。電源トランスを除くパーツ類はすべて基板付けになっています。チューニング機構もしっかりしたものが付いています。
オートラウドネス搭載とあります。ラウドネス機能は、小音量には高低音の感度が下がる人間の聴覚を補正するように、高低音を補正する機能です。本格的なものは、センタータップが出た可変抵抗ををボリュームに使い、音量に合わせてトーンコントロールを効かせるものですが、より簡単な回路ですが、特に重要な低音側だけを単純にバスブーストしているものもあるようです。このモデルがどのタイプなのかは分かりませんが（多分廉価なモデルですので後者だと思うのですが）、今回、確認し損ねてしまったので、また折をみて回路を追ってみたいと思います。
スカイセンサー5800とかが人気を博していた時期のラジオで、当時何度も見ていたカタログで見た記憶がありますが、お目当ては短波ラジオやポケットラジオでホームラジオは眼中になかったことから、あまり印象に残っています。
100Vの電源コードは直付けで取り外すことができず、収納スペースもなく、本体背面に巻き付ける形です。ホームラジオとはいえ、電池主体で使いたい人には、この電源コードがやや野暮ったいです。この後継のTR-9150では、コストダウンもあったのか乾電池のみの仕様になりました。
トランジスタは7石ですが、1石はLEDのドライブに使っているようですので、ラジオとしてオーソドックスな6石ラジオと思われます。パワーアンプはプッシュプルで、ゲルマニウムダイオードに放熱板を付け、700mWを得ています。シリコントランジスタは、当初は高周波特性を目的に開発されていたためか、中出力用にはしばらくはゲルマニウムタイプが使用されていました。
その他の5つのトランジスタは、この時代によく使用されている、錠剤を横にしたような形の小さいやつです。型番が明記されていないので詳細不明ですが、2SC40xの相当品のようです。ソニーにはEIAJに登録していないトランジスタがあったそうで、TX-***という独自の番号が付いているそうです。
海外でしか販売されたなかったようですが、1965年TR-8という非常にコンパクトなAMラジオのサービスマニュアルに、使用トランジスタとしてTX-128という型番が記載があります。このトランジスタのことかもなのかもしれません。

仕様

発売:

1974年 (昭和49年)

電源:

単1x4、AC100V

トランジスタ等:

7 TR

音声出力:

　700mW *2

バーアンテナ:

160mm

スピーカー:

100mm*2 , 1.5W, 8Ω

操作部:

電源SW、ボリューム、トーンコントロール、チューニング

表示等:

同調LED

受信周波数:

AM:: 535 - 1605 kHz

中間周波数:

455kHz

ターミナル:

イヤホン

シリーズ:

サイズ:

W300 x H170 x D105mm

重量:

1300g

色:

ダークグレー、オレンジ

製造:

日本製

価格:

6,500円 *2

*1　本体記載　　*2　商品のしおり

メンテナンス

鳴ったり鳴らなかったりするということでしたが、電源スイッチの接触が悪いようで、スプレーを軽く拭いて後は、内部清掃しました。

エントリーモデルですが、ホームラジオだけあり、アースとアンテナが接続できるようになってはいますが、端子ではなく、リード線が出ているだけです。

キャビネット後ろ側です。拭き取り掃除としました。後ろ側でシャーシやスピーカーを固定するようになっています。

ゲルマニウムトランジスタ2SB324が2個、放熱板付きで使用されています。ソニーではなく松下製です。

キャビネット前面側です。

スチッチ類の清掃のため、シャーシ・基板等一通りはずしました。100V側はコンセントに直結で、コンセントを指すと常時電圧がかかるタイプです。

シャーシと基板を合わせたところです。シャーシは裏蓋で固定されているだけでです。

糸をかけ直しました。写真を撮るのをわすれたため、苦労しました。シリアル番号で糸の掛け方に微妙な違いがあるようです。

スライドボリュームはどうも故障が多い感触がありますが、このセットは問題ありませんでした。埃よけがぼろぼろでしたので、交換しました。

薄い黒の不織布(雑草用シートの切れ端です)をカットしてつかいました。

貼り付けたあと、外側からカッターでスリットをいれました。自然な感じに仕上がりました。

キャビネットに納めます。固定は裏蓋で押さえつける形です。

カタログ情報等

製品のしおり

製品のしおり20 (1975), p21

発光ダイオード採用　お部屋のワンポイントラジオ(AM専用)
TR-9650　　¥6,500

ダイヤル指針がピカッと光る発光ダイオード採用,選局が楽しくなります
音量を絞っても低音部・高音部がいきいきとした音質で楽しめるオートラウドネス回路採用,音量・音質調整はスライド式
色はオレンジとダークグレーの2種類

電源 - 乾電池(単1型4個)6V, 電灯線
大きさ - 幅300X高さ172X奧行104mm　重さ-1.7kg

2023//

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