SONY ICR-S30

概要

• AM専用のICポケットラジオです。1994年の発売となっていますが、外観は1990年発売のICR-S40とほとんど同じラジオです。手元にあるものを細かく見比べると、ビスの色が異なります。ICR-S30では外観の黒に配慮してか、黒色に塗装されたビスが使用されていますが、ICR-S40は銀ギラのビスが使用されています。縦型、ポケット、廉価の路線で、TR-1811からの流れをくむものと思われます。
• 間違いの防止もあるのか、古くは、型番の右側の数字は同じで、左側のアルファベットが異なる型番のモデルは出ていなかったように思うのですが（例えば、S1はICR-S1しかなく、S3はICF-S3しかない）、S30については、ICR-S30とICF-S30の両方があり、紛らわしいです。発売時期は10年以上異なるため、当時は支障なかったのではと思います。
• ICR-S40は日本製でしたが、このラジオは製造は中国（中華人民共和国）に変更されています。このラジオの後継機種は、2010年代まで発売されたICR-P15まで、基本的な構造は変更されていないようです。そういう意味ではAMポケットラジオの完成形なのかもしれません。
• 1-ICのラジオです。外観はICR-S40と同じですが、中身は相応の変更があります。ICR-S40は、ICR-S4の時代から使用されていたCXA-1033というICが使用されていますが、本モデルはCXA-1600というICに変更されています。それに伴い、コストの高そうな、中間周波トランスやセラミックフィルタが使用されていません。大きな部品は、可変抵抗と電源スイッチ、バリコン、アンテナ、発振用のコイルのみです。その他の部品も、ケミコンが4個、セラコンが2個、あとは検波用のダイオード2個だけです。ただ、多くの個体を確認したわけではないので、この変更はどちらかの品番の中で行われた可能性もあるかもしれません。
• CXA1600PはAMラジオ用のICで、中間周波数を、一般的な中波で使用されている周波数455kHzの1/10程度である、55kHz程度まで下げたスーパーヘテロダイン回路を採用しています。中間周波数を大きく下げることで、LC回路やセラミックフィルターを使用せず、半導体を用いたアクティブフィルタで、中間周波数を取り出しているようです。
• 低いIFは、受信周波数とイメージ（影像）周波数が近くなり、混信が問題となる場合があります。混合回路に単純にミキサーではなく、複素ミキサーという位相をπ/2ずらした局発信号を用いてイメージを抑圧する回路が使われることがあるようですが、相応に複雑な回路です。
• このICのデータシートを見た感じでは、ブロックフローにミキサーの箱が書かれているだけで詳細不明ですが、廉価なラジオ用のICですので、イメージと受信周波数の差は110kHzほど、中波のバンド幅は15kHzになりますが、これぐらいであれば高周波増幅と合わせて、イメージが問題とならないということなのかもしれません。

仕様

発売：

1994年

電源：

単3 x 2

トランジスタ等：

1 IC

バーアンテナ：

約50mm

最大出力*：

80 mW

操作部：

電源SW、ボリューム、チューニング

表示等：

なし

受信周波数：

AM:

530 - 1605 kHz

ターミナル：

イヤホン

サイズ：

W73mm x H115mm x D36mm

重量：

135g

色：

黒、赤

製造：

中国製

価格：

オープンプライス

メンテナンス

本体裏側と、電池を外したところにビスがあり、ビスを外せば簡単に分解できます。電池の電極はばね式の接点があり、基盤を裏蓋で押し付ける形で接触させています。コンデンサーはルビコンですが、バリコンやスピーカーはよくわからないメーカーになっています。スピーカーのVirtueは他機種(ICF-8等)でも見かけます。

裏蓋側には、２つの電池をつなぐ電極が取り付けられています。簡単に外れますので、丸洗いできます。

スピーカーはボンド付けのため、外しませんでした。ICR-S40は、ゴム状の充填剤で埋めた後、裏蓋で押さえる形式でしたが、コストダウンのためか変更されています。

つまみ類もねじ止めはなくはめてあるだけで、簡単に外れます。ケースの形を工夫して、組み立て後はガタガタしないようになってます。

カタログ情報等

製品のしおり 90 P71

手軽に聴ける手のひらサイズのAM専用ハンディポータブルラジオ
ICR-S30 オープン価格

• AM専用でお手軽なプライス
• ハンドストラップ付き
• 吊り下げパッケージ入り

2019/01/12, Update 2022/06/07

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